コンプリート・シャーロック・ホームズ
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スキャンランは列車を降りた。そしてマクマードはもう一度自分の考えに落ちていった。既に夜はふけていた。そして脈動する火炉の炎が、暗闇の中、唸りを上げて燃え盛っていた。その赤々とした背景に、黒い人影が、まるで巻き上げ機の一部のように、果てしなく続く金属音と燃え盛る炎のリズムに合わせて、屈んでは身を伸ばし、捻っては戻していた。

「地獄とはこんな光景かもしれないな」声が聞こえた。

マクマードは振り返って見た。警官の一人が席を移し、炎を上げる鉱滓に見入っていた。

「正確に言えば」もう一人の警官が言った。「地獄はこんな光景に違いない。あれよりもっとひどいものがあるのか、俺にも想像できんな。お前はこの辺では新顔だな、若いの?」

「だとしたら何だ?」マクマードは不機嫌そうに答えた。

「一言だけ、友人を選ぶのは慎重にしたほうがいいと助言しよう。もし俺がお前ならマイク・スキャンランや奴の仲間と知り合いになろうとは思わん」

「俺が誰と友達になろうと、お前らに何の関係がある?」マクマードはうなった。その声で、客車の全員が振り返ってこの口論を見た。「俺がお前らに助言を頼んだか?それともお前らは俺を助言なしでは何もできないほど青二才だと思っているのか?あんたらは訊かれた時に答えればいい。俺だったら、当分お前らに何か訊いたりせんがな!」彼はうなりを上げる犬のように、警官に向かって顔を突き出し歯をむき出した。

二人の警官は、大柄の温厚な男たちだったが、親切な申し入れをとんでもない激しさではねつけられて驚いた。

「噛み付くな、余所者」一人が言った。「お前のためを思って言ったんだ。その身なりからして、お前がこの土地のことを知らんだろうと思ってな」

「俺はこの土地を知らんが、お前らみたいな奴は知らんわけじゃない!」マクマードは凍りつくような怒りを込めて叫んだ。「お前らはどこでも同じみたいだな。誰も頼まないのにいらん忠告を押し付けてくる」

「そう遠からず、お前とはまた会いそうだな」巡査の一人がにこりとして言った。「俺が判事なら、お前は最高の獲物だな」

「俺も同じ事を考えていた」もう一人の警官が言った。「また会う事になりそうだな」

「俺はお前らの世話にはならんから、下らん事は考えるな!」マクマードは言った。「俺の名前はジャック・マクマードだ、 ―― 覚えたか?用があるなら、俺はバーミッサ、シェリダン通りのジェイコブ・シャフターのところにいる。俺がこそこそ逃げ回っているように見えるか?昼でも夜でも、俺はあんたらを見てビクビクするような人間じゃない、 ―― 分かったか!」

この新顔の豪胆な振る舞いに、炭鉱夫から共感と称賛のどよめきが起きた。二人の警官は広い肩をすぼめて、警官同士の会話に戻った。