コンプリート・シャーロック・ホームズ
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「それは役立つ情報です、ホームズさん。間違いなくあなたの言うとおりです。素晴らしい!素晴らしい!世界中の銃器メーカーの名前を覚えているんですか?」

ホームズは手を振ってその話題を逸らした。

「間違いなくアメリカの猟銃です」ホワイト・メイソンは続けた。「切り詰めた猟銃がアメリカのどこかで武器として使われていると、読んだような気がします。銃身の名前は別にしても、邸に侵入して主人を殺した男はアメリカ人という証拠が何点かあると思いました」

マクドナルドは頭を振った。「おいおい、それは明らかに先走りすぎだぞ」彼は言った。「そもそも、あの家に侵入者がいたという証拠はまだ何もないじゃないか」

「開いた窓、窓枠の血、奇妙なカード、部屋の隅の足跡、猟銃、これだけある!」

「どれも、あらかじめ用意しておけたものばかりだ。ダグラス氏はアメリカ人だった、 ―― 少なくとも長い間アメリカに住んでいた。バーカー氏も同じだ。アメリカの物があったとしても、外部のアメリカ人を想定する必要はない」

「エイムズという執事によると・・・・・」

「執事がどうした?信頼していいのか?」

「サー・チャールズ・サンドスに10年仕えた人物です、 ―― 極めて信頼できます。ダグラス氏が五年前に領主邸を手に入れて以来、ずっと近くにいました。執事は家であんな種類の銃を見た事がないそうです」

「あの銃はそもそも隠すために作った銃だ。銃身を切り詰めたのはそのためだ。どんな箱にでも入れられたはずだ。そういう銃が家になかったなどと、なぜ断言できるんだ?」

「ともかく、見たことがないのは事実だ」

スコットランド生まれの頑固なマクドナルドは頭を振った。「誰かが家に侵入したというのは、納得できん」彼は言った。「ちょっと考えても見ろよ」議論に夢中になると、彼のアバディーン訛はさらに強くなった。「もしこの外部の人物がこの銃を持ち込んでこういう奇妙な事件を起こしたと仮定すれば、いったいどういうことになるか、考えてみてくれ。いいか?そんな事はありえない!あまりにも常識外れだ。ホームズさん、こんな話をどうお考えになりますか?」

「じゃあ、君の意見を聞かせてもらおうか、マック君」彼はあたかも裁判官のような口調で言った。