コンプリート・シャーロック・ホームズ
ホーム長編緋色の研究四つの署名バスカヴィル家の犬恐怖の谷短編シャーロック・ホームズの冒険シャーロック・ホームズの回想シャーロック・ホームズの帰還最後の挨拶 シャーロック・ホームズの事件簿

彼はふざけた調子で話していた。しかし濃い眉がぴくぴく動き、失望と苛立ちを物語っていた。私は無力で落ち込んだ気分になり、暖炉の中を見つめながら座っていた。ホームズの突然の叫びで、長い沈黙が破られた。彼は本棚に駆け寄り、黄色い表紙の本をもう一冊手にして戻ってきた。

illustration

「ワトソン、僕らは新しすぎて報いを受けたのだ!」彼は叫んだ。「先走りすぎると、たいていえらい目にあう。今日は1月7日なので、我々はちゃんと新しい年鑑に換えていた。ポーロックは古い年鑑から抜き出して文章を作った可能性が高い。もし彼が説明の手紙を書いていれば、間違いなくそう連絡してきたはずだ。さあ、この534ページが何を提供しようというのか、確認してみよう。13番は Thereだ。これはかなり見込みがあるぞ。127番は is だ。 There is」ホームズの目は興奮で輝き、単語を数えている時、繊細な指は震えていた。「『危険』ハ!ハ!上出来だ!書き留めてくれ、ワトソン。『危険がある 本当にすぐにも起こりうる』それから『ダグラス』という名前があり、『豊かな、地方、今、バールストン館で、バールストン、確信、差し迫っている』見たか、ワトソン!純粋な理性とその結果をどう思う?もし八百屋に月桂冠のようなものがあればビリーを買いにやらせるところだ」

私は彼が解読している時、膝の上のフールスキャップ紙に自分が書きなぐった奇妙な文章をじっと見続けていた。

「なんと妙な単語を寄せ集めたものだ!」私は言った。

「とんでもない。彼は非常に上手くやったよ」ホームズは言った。「自分の言いたい事を表現するのに、一段の中から単語を探すとすれば、必要な単語が揃っていると期待することはまず出来ない。どうしても手紙を読む人間の知性に頼らざるをえない。これでも意図は完全に分かる。ダグラスという人物に対して、何か悪行が企てられている。ダグラスが誰かは知らないが、おそらく書かれた場所に住んでいる裕福な田舎の紳士だろう。ポーロックはその企てが目前に迫っていると確信していた、 ―― 彼が利用できた単語の中で『確信』が『確信する』という意味に最も近い。これが我々の解読した結論だ、 ―― 熟練の職人のような、見事な分析だったじゃないか!」

ホームズは、みずからに課している高い水準に届かなかった時は、がっかりして嘆くが、良い仕事をした時は、真の芸術家に共通する喜びを感じる男だった。彼はまだ自分の成功を見ながらニヤニヤしていた。その時ビリーが扉をさっと開け、ロンドン警視庁のマクドナルド警部が部屋に案内された。