コンプリート・シャーロック・ホームズ
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それは昨夜モンタギュー・プレイスから投函されたもので、次のように書かれていた。

ホームズ様
私に家庭教師になってくれという依頼を受け入れるべきかどうか、是非ご相談にのっていただきたいと思います。もしお邪魔でなければ明日の十時半に伺います。
敬具
バイオレット・ハンター

「この若い女性は君の知り合いか?」私は尋ねた。

「まさか」

「今十時半だな」

「そうだ。あのベルの音は間違いなく彼女だな」

「想像以上に面白くなる可能性もあるんじゃないかな。青い紅玉の事件を覚えているだろう。最初は軽い気持ちで始めたが、結局、重大な捜査に発展したじゃないか。今回もそうなるかもしれない」

「そうだな、そう期待する事にするか。しかしすぐに分かる事だな。まず間違いなく、あれが依頼者だ」

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ホームズが話していると扉が開いて、若い女性が部屋に入ってきた。彼女は質素だがきっちりとした身なりで、明るく機敏な顔つき、千鳥の卵のようなそばかす、キビキビした所作は、世の中を自分の力で渡っている女性のものだった。

「本当にお手数をお掛けして申し訳ありません」ホームズが挨拶に立ち上がると彼女がこう言った。「しかし私は非常に奇妙な体験をして、それを相談できる両親も親戚と呼べる者もおりません。多分あなたなら、私がどう対処すればよいか親切に教えていただけるだろうと思いました」

「お座り下さい、ハンターさん。私でお役に立てるなら、光栄です」

ホームズが新しい依頼人の態度と話し方に好ましい印象を持った事が分かった。ホームズは彼女を探るような目で見回し、それから彼女の話を聞くため、瞼を眠そうにたらし、指先を突き合わせて椅子に腰掛けた。