コンプリート・シャーロック・ホームズ
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ホームズの尋問は扉をあわただしくノックする音で中断された。依頼人が掛け金を外すや否や、アメリカ人弁護士が興奮して部屋に駆け込んできた。

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「見つけたぞ!」彼は叫んだ、頭の上で一枚の紙を振りながら。「急いであなたに知らせるべきだと思いました。ネイサン・ガリデブさん、おめでとうございます!あなたは大金持ちです。我々の一件は首尾よく終わり、全て問題ありません。ホームズさん、もしあなたに余計な手間をかけさせたとすればただ申し訳ないとしか言いようがありません」

彼はその紙を依頼人に手渡した。受け取ったネイサン氏は、立ったまま印のついた広告をにらみつけた。ホームズと私は前のめりになって彼の肩越しに読んだ。こういう広告だった。

ハーワード・ガリデブ
農機具製作
刈取り束ね機、刈取り機、蒸気エンジンと手動の鋤、ドリル、まぐわ、農業荷車、四輪に馬車、その他関連製品
深堀井戸は見積もり
アストン、グローブナー・ビルまでお申し込みを

「素晴らしい!」この家の主人があえいだ。「これで三人目の男が揃った」

「私はバーミンガムでの調査を始めていたんです」アメリカ人が言った。「それでバーミンガムの代理人がこの地方新聞の広告を私のところに送ってきたんです。急いで話を通さなければなりません。私はこの人物に、明日の午後四時に彼の事務所にあなたが会いに行くと手紙をだしました」

「あなたは私に会いに行って欲しいんですか?」

「あなたはどう思います、ホームズさん?その方が賢明だと思いませんか?私はこの通り放浪のアメリカ人で、それが不思議な話を持ってきた。私の言うことを彼が信じるでしょうか?しかしあなたはイギリス人で身元もしっかりしている、だから彼はあなたの言うことなら注意を払わざるをえないでしょう。もしご希望なら一緒に行きたいのですが、明日は非常に忙しいのです。もし何か問題が起きればいつでも追いかけます」

「しかし、何年もそんな遠くまで言ったことがないのでねえ」

「何でもないですよ、ガリデブさん。乗り換えは計算済みです。12時に出れば2時過ぎにはもう着くはずです。その後、その夜のうちに戻ってこれます。あなたがしなければならないのはこの人物に会って、事情を説明し、彼の存在を証明する宣誓供述書を入手することだけです。間違いありません!」彼は熱っぽくこう付け加えた。「考えてみてください、私はアメリカのど真ん中からはるばるやってきたんですよ。この件にかたをつけるために、あなたが100マイル行くことなど本当に小さなことではないですか」

「その通りです」ホームズが言った。「この紳士のおっしゃる通りだと思います」

ネイサン・ガリデブは絶望的な雰囲気で肩をすくめた。「まあ、あなたがどうしてもと言うなら行きましょう」彼は言った。「あなたが私の人生にどれほどの希望をもたらしてくれたかを考えれば、あなたのおっしゃることを断ることはとても出来ません」

「ではそれで決まりですね」ホームズが言った。「もちろん出来る限り早く私に連絡をいただけますね」

「そのように取り計らいます」アメリカ人は言った。「さて」彼は腕時計を見ながら付け加えた。「もう行かなくては。ネイサンさん、明日あなたがバーミンガムに行ったか確認に来ます。一緒に行きますか、ホームズさん?そうですか、では、さようなら、明日の夜にはあなたにいい知らせを届けられるでしょう」

アメリカ人が部屋から出て行った時、私はホームズの顔が晴れ、考えあぐねて当惑した様子が消えているのに気づいた。

「あなたのコレクションに目を通させていただけませんか、ガリデブさん」彼は言った。「私の仕事にはさまざまな知識が全て役に立ちます。そしてあなたのこの部屋はその宝庫です」

依頼人の顔は喜びに輝き、大きな目の向こうの目がキラリと光った。

「ずっとあなたは非常に知的な人と伺っていました」彼は言った。「もしお時間があれば今からご案内しますよ」

「残念ながら、それがないのです。しかしこの標本はきちんとラベル付けして分類されているので、あなたに個別に説明していただく必要はあまりないようです。もし明日ここに寄ることが出来れば、私がこれにざっと目を通しても構わないでしょう?」

「全く問題ありません。大歓迎です。ここはもちろん鍵が掛かっているでしょうが、サンダース夫人が四時までは地下にいますので、彼女の鍵であなたを入れてくれるでしょう」

「もしかすると明日の午後、手が空くかもしれません。もしサンダース夫人に一言声をかけていただければ、非常に好都合だと思います。ところで、あなたの不動産屋はどちらですか?」

依頼人はこの突然の質問に驚いた。

「エッジウェア・ロードのハロウェイ&スティールです。でもどうしてですか?」

「私は建物に関してはちょっとした考古学者でして」ホームズは笑いながら言った。「私はこの建物が、クイーンアン様式か、ジョージア様式かちょっと迷っています」

「間違いなく、ジョージア様式です」

「そうですか。もう少し前かと思ったのですがね。しかし簡単に確かめられますね。では、ごきげんよう、ガリデブさん。バーミンガムへの道中の無事を祈っていますよ」